親和図法とは? カード作成、分類方法を具体例で解説

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「親和図法とは、どんなものか?」
「どんな場面で活用し、何のメリットがあるのか?」
「具体的な題材で作成手順を知りたい」

このような疑問・悩みをお持ちの方に向けた記事です。10分で理解できるよう、わかりやすく簡潔に解説します。

最初にイメージをお伝えしておくと、親和図の構成を理解するのは、それほど難しくないと思います。

ただ、いざ自分で親和図を実際に作ってみると、どのようにグループ化して進めればよいのか迷いがちで、手が止まることが多かったりします。

この記事では、具体的な題材を交えて、作成時の注意点も合わせて解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしていただければと思います。

親和図法って何?

とらまる
とらまる

親和って、仲良しってこと?

親和図法とは

親和と聞くと、「親和性」という言葉が馴染み深いですが、はじめに意味を確認しておきましょう。

【親和性(しんわせい)】
物事を組み合わせたときの、相性のよさ。結びつきやすい性質。

引用元:デジタル大辞泉(小学館)

親和図とは、あるテーマに対する意見や事実を言語データ化して、似た性質のものを結び付けて図示化したものです。

未知の問題や未経験の問題など、不明確な課題に対する解決策を導き出すための手法で、別名でKJ法とも呼ばれています。

KJ法とは、文化人類学者の川喜田二郎氏(東京工業大学名誉教授)が考案したアイデア発想法で、イニシャル名から名づけられています。

言語データを取り扱う図式としては、連関図法系統図法もありますが、これらは課題が明確な時に使う手法です。

一方、親和図法は課題や目的がはっきりしていない中で、頭の中のゴチャゴチャした情報を洗い出して、課題や方針を明確にすることを狙いとした手法です。

親和図の構成

以下に親和図の一例を示します。

親和図の例

個々の言語データは、一枚ずつのカード(またはラベル)に記載され、親和性のあるカードがグループ化されて、タイトル(表札)が付けられています。

また、グループどうしを矢印で結び付けて、関係性を表しています。

親和図は、個々の言語データの要素を結び付けて、大きなカテゴリに集約していく「ボトムアップ型」の思考方法です。

系統図法のように、目的から手段にブレークダウンする流れの「トップダウン型」の思考法とは性質が異なるので、覚えておくとよいでしょう。

なぜ親和図法を使うの?

目的・用途・メリット

  1.  課題の明確化
    事実や意見を図式化、グループ化して整理できるので、漠然とした状況から課題を浮き彫りにすることができます。

  2.  方針・戦略の策定
    親和図を作成する過程で、新たな課題や弱点などの気づきが得られるので、次のビジョンを明確にすることに有効です。

  3.  情報の共有
    図式化して情報資産として残すことで、第三者と情報を共有する際にも活用できます。

    また、職場全体で取り組むことで意識向上にも効果的です。

みんなの頭の中を整理できるってことだね

どのような場面で使うの?

親和図法は、品質管理の現場に限らず、さまざまな業種で登場しますが、ここでは活用例の一部を紹介します。

【活用例①】自社製品の強み・弱みの分析

親和図法は、会社の集合研修で自己分析を行う際にも、よく用いられます。

「自分の強みを教えてください」と突然言われると、自己分析を十分にできていなかったり、説明の内容がまとまっていなかったり、と意外に難しいものです。

自社製品も同じで、意外と普段から強みと弱みをキチンと認識できていなかったりするもので、これでは他社に打ち勝てる事業戦略も立てられません。

親和図法では、強みと思われるキーワードをとにかく出せる限り絞り出して、それらをグループ化していく過程で、共通する要素や因果関係を見つけ出し、強みの根幹となる要素を分析していきます。

根本を掴むことができれば、まさにそれが将来に向けた課題・目標であり、次のステップでは系統図法などを用いて具体的なアプローチ方法を検討することで、効率的・論理的に戦略を立てることができます。


【活用例②】工程管理における課題抽出

例えば、製造現場のムダを取りたいという漠然とした要望があるとします。

生産現場では一般的に7つのムダに分類されることが多いですが、どの種類のムダに着目すればよいのか具体的に把握できていないと、要因の深掘りや改善策の検討に進められません。

このような状況で親和図法は有効な手法であり、まずは現場の実態について、作業者からのアンケートや点検・記録表などを収集して、意見や事実の情報を集めましょう。

雑然とした言語データから、共通する要素や因果関係を見つけ出し、優先して改善すべき根本の課題を分析していきます。

QC7つ道具パレート図も現状分析の有効な手法であり、これらの手法と親和図法を組み合わせて活用することで、より効率的に課題を洗い出すことができます。

どうやって作るの?

何から手を付ければいいんだろう

手順

  1.  テーマの設定
  2.  言語データの収集
  3.  カードの作成
  4.  グループ化
  5.  親和図の作成
  6.  文章化
  1.  テーマの設定
    参加者を集めて、まずテーマを決めます。

    課題の明確化や方針の策定など、目的をキチンと共有した上で、具体的なテーマを設定します。

    今回は、将来機種の開発方針を模索することをイメージした題材として、「ノートPCを選ぶときに重視することは」というテーマを例にします。
  2.  言語データの収集
    テーマに関連する事実、意見、発想などを、できるだけ多く書き出します。

    ここでは、とにかく多くの情報を集めることが重要で、アンケートなどを活用しながら、どんな些細なことでもよいので、どんどん書き出していきましょう。

    後ほどポイントを解説しますが、複数人でブレーンストーミング方式(BS法)を活用するのも有効です。

    抽出した言語データは、ポストイットなどに書いてホワイトボードや模造紙に貼っていきましょう。
  3.  カードの作成
    言語データの重複がないか確認し、文章化してカードを作成しましょう。
    難しい言い回しは使わず、できるだけ簡潔に、主語と述語だけで構成されるようなシンプルな文章がよいです。
  4.  グループ化
    言語データのカードから、似た意味を持つ「親和性のある」ものを集めてグループ分けしましょう。
    さらに、そのグループにタイトル(表札)を付けましょう。

    例えば、「動作音が静か」「タイピング音が静か」は「音」に関する項目、「軽い」「薄い」は「本体サイズ」に関する項目なので、それぞれグループのタイトルを付けます。
    一度にたくさんの項目をまとめる必要はありません。また、どのグループにも分類できない「一匹狼」の項目が残っても構いません。

    一次グループの分類が完了したら、こんどは一次グループどうしの親和性の高いもので、二次グループを作ります。
    これを繰り返して、グループの数が5~10程度になるようにします。
  5.  親和図の作成
    グループの分類が終わったら、次はグループの配置を考えます。
    グループどうしの因果関係や相関、相反などの関係があるものを近い位置に配置します。

    この後で、関連のあるグループを線で結ぶので、離れた位置に配置すると、見栄えが悪くなって分かりにくくなります。

    今回の事例では、価格と関連するグループが多いので、中央に配置します。

    最後に、グループの関係性を矢印で結んだら、親和図の完成です。
    因果関係は片矢印、相関は線、相反は両矢印を使用します。
    関係性の強弱がある場合は、矢印の太さを変えるなど工夫します。
  6.  文章化
    親和図が完成したら、最後に関係性や分かったことを文章化して残しましょう。

    図解化することが目的ではなく、最初に設定したテーマに対しての結論を出すことまでが、親和図法の一連のプロセスです。

    親和図法で導き出した結論が、次の課題解決に向けたスタートになるので、キチンと文章で表現することが重要です。

親和図を作るポイント

最後に、親和図を作るときのポイントを解説します。

  1.  カード内容を抽象化しすぎない
  2.  トップダウン思考でやらない
  3.  文章化までキチンとまとめる
  1.  カード内容を抽象化しすぎない
    カードの内容は、できる限り具体化したものを記載しましょう。

    つい、難しい単語や一般化した抽象的な単語を入れてしまいがちですが、そこから洗い出された課題も抽象的で何となくスッキリとしないものになってしまいます。

  2.  トップダウン思考でやらない
    親和図法は、ボトムアップ思考型の手法で、具体的な意見や事実から共通性を見出すことに重きを置いています。

    トップダウン思考で進めると、気づけば抽象的なものになっていることがあります。

    また、最初からグループ化するイメージが決まっている「結論ありき」の思考となってしまい、新たな気づきも生まれなくなってしまいます。

    ボトムアップ思考と具体化」を常に念頭において、進めるようにしましょう。

  3.  文章化までキチンとまとめる
    繰り返しになりますが、親和図法で導き出した結論が、次の課題解決に向けたスタートになるので、最後までやり遂げましょう。

また、ブレーンストーミング法(BS法)の注意点として、以下も参考にしながら進めると活発な良い議論ができると思います。
①:自由意見
 ⇒相手を否定せず、発言しやすい環境を整える
②:質より量
 ⇒言語データは質を意識しすぎると、発言を控えてしまう
③:判断、結論を急がない
 ⇒途中で抽象的にまとめてしまいがち
④:アイデアを統合して発展させる
 ⇒みんなでブラッシュアップする

みんなで一丸となって取り組もう

こてつ経験談

BS法を教えてもらった

こういう手法があることを最初に知ったのは、会社での研修の時でした。

研修そのものは全く別の内容でしたが、集合研修のグループワークを行う際に、「さぁ、いまから10分間で、○○のアイデアを出せるだけ挙げてみましょう」と言われ、突然ブレーンストーミング(BS)をやることになりました。

もちろん、その場のメンバーは全員初耳で、基本的なやり方やルールの説明を受けたものの、そんな形式でのアイデア出しをやったことがないので、探り探りで進めることになります。

全員がお互いの顔色を伺いながら、意見を出し、共感して、さらにアイデアを加える・・と、説明を受けた通りに検討を進めて、ひとまず、その場は何とか結論まで導き出して終えることができました。

実際に業務でやってみた

研修を終え、せっかく教えてもらった手法なので、実際に業務で活用してみることにしました。

当時、新しい製品開発に携わっており、「小型・低コスト」という必達の目標を与えられていました。

もちろん、製品としての機能・性能の満足が大前提ですが、小型・低コストのキーワードに関しては、具体的な実現方法までは決まっておらず、最終的に数値目標を達成できれば良いというものでした。

ある意味、自由度が高いと何をやったらよいのやら・・という感じで、進め方に困っていたところだったので、早速ブレーンストーミング法でアイデア出しを実践してみたのです。

ところが、研修のテーマと違って、本業のネタで実際にやってみると意外と難しい・・。

どうしても、普段の議論と同じ流れで、相手の意見がおかしいなと思ったら否定してしまうし、途中途中で状況を整理してまとめようとしてしまうし、慣れるのに苦労しました。

正直なところ、何回か会議の回数を重ねて、まともなアイデア出しができるようになりました。

私自身の感想ですが、普段と頭を使う部分が全然違うんでしょうね。すごく疲れました・・。

その代わり、いつもと違う目線、立場で考える機会を強制的に作ったことで、制約事項にとらわれない柔軟な思考を心がける良いキッカケとなりました。

行き詰った現状に困っている方は、たまには、頭の切り替えに実践してみるのもいいですよ。

まとめ

  • 親和図
    ⇒あるテーマに対する意見や事実を言語データ化して、似た性質(親和性の高い)のものを結び付けて図示化したもの
  • 親和図法
    ⇒親和図を用いて、不明確な課題に対する解決策を導き出すための「ボトムアップ型」の手法(別名:KJ法)
  • 目的・用途
    ⇒課題の明確化、方針・戦略の策定、情報の共有
  • 親和図を作るポイント
    ⇒①:カード内容を抽象化しすぎない
     ②:トップダウン思考でやらない
     ③:文章化までキチンとまとめる

職場に潜む隠れた課題や問題点を明確にできる有効な手法ですので、改善や戦略検討の足がかりとして、親和図法を活用していきましょう。

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この記事を書いた人

【経歴】
関東在住、40代、製造業(品質部門)。
これまで、研究開発、設計、生産技術、仕入先の品質管理を手掛ける。

【保有知識・技術分野】
統計学、信頼性工学、品質工学。
半導体、基板、有機材料、金属、セラミックスの材料、製造、加工技術。
部品加工(機械加工、化学処理)、組立・実装技術、分析・物理解析技術。
QC検定1級保有。

【当サイトについて】
品質・生産の基礎知識をテーマに、用語の解説、使い方(作り方)、メリット、考え方のポイントを分かりやすく解説しています。
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