系統図法とは? 目的と手段の分類のコツを具体例で解説

新QC 7つ道具

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「系統図法とは、どんなものか?」
「どんな場面で活用し、何のメリットがあるのか?」
「具体的な題材で作成手順を知りたい」

このような疑問・悩みをお持ちの方に向けた記事です。10分で理解できるよう、わかりやすく簡潔に解説します。

系統図は、目的と手段を樹形図のような様式で図式化したもので、呼び方の馴染みは少ないものの、これまで気づかないうちに系統図法を使っていた、なんてこともあるかもしれません。

この記事では、系統図法の基本的な説明に加えて、製造業での具体的な題材や、新QC7つ道具親和図法との思考方法の違いについても解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしていただければと思います。

系統図法って何?

とらまる
とらまる

「けいとう」って、つながりってことだよね

系統図法とは

系統図とは、目的と手段を系統的に整理して、その体系を樹形図のような形式に表した図のことです。

ここでいう目的は、問題を解決するための目標のことで、系統図法とは系統図を用いて目標を達成するための方策を整理する手法で、新QC7つ道具の一つです。

系統図の構成

以下に一例を示します。

系統図の例

左端に「目的」を記載し、その右側に実現手段を挙げていきます。

構成単位の大きいものから一次手段、二次手段と分類され、図の右にいくほど枝分かれして細分化されます。

系統図法は、目的から手段にブレークダウンする流れの「トップダウン型」の思考方法です。

頭の中の情報を図示化して整理する「マインドマップ」という手法が世界中で使われていますが、これに似た考え方かもしれませんね。

親和図法のように、個々の言語データの要素を結び付けて、大きなカテゴリに集約していく「ボトムアップ型」の思考法とは性質が異なりますので、覚えておくとよいでしょう。

普段から使えそうな考え方だね

なぜ系統図を使うの?

目的・用途・メリット

  1.  方策の追求
    一次手段、二次手段と階層構造で掘り進めていく形式ですので、深堀りの検討を繰り返すことで、具体的な対応策に落とし込むことができます。

  2.  方策の分類、整理
    階層に分けて網羅的に整理できることから、いままで気づいていなかった新たな解決手段を見つけ出せる場合もあります。

  3.  情報の共有
    図式化して情報資産として残すことで、第三者と情報を共有する際にも活用できます。

どのような場面で使うの?

ここでは製造業での活用例の一部を紹介します。

【活用例①】生産性改善の方針検討

生産性の改善は、製造業に携わる方は必ずと言っていいほど頭を抱える課題であり、製造部門だけでなく、研究開発、設計、調達も含めて、すべての部門に通じる大きなテーマです。

例えば目的を「生産性を向上する」と設定します。

このような大きい枠組みでのテーマの場合、一次手段では大きい単位で分割すると、その後の枝分かれが分かりやすくなるので良いでしょう。

一例として、「生産効率」「生産能力」「生産コスト」という視点で分類してみました。

あるいは、一次手段をQ(Quality:品質)、C(Cost:コスト)、D(Delivery:納期)に関する項目に分類すれば、以降ではそれぞれの分野で細分化をすればよいので、その方がイメージが沸きやすい場合もあります。


【活用例②】製造歩留り改善の方針検討

先ほどは、大きい枠組みのテーマを例にしましたが、今度は具体的なテーマでの活用例を紹介します。

例えば、製造歩留りの改善という目的は、製造部門に重点的に関わる課題です。

この場合、一次手段の分類として、4Mの要素に分けるのも良いです。4Mとは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)のことで、品質管理での大まかな分類手法として、一般的に用いられているものです。

作業者は現場部門、装置や製造方法は技術、材料は調達といったように、手段のカテゴリごとに主担当がイメージしやすくなり、役割分担の認識を合わせる上でも有効に活用できると思います。

分類のパターンをいくつか覚えておくと良さそうだね

どうやって作るの?

使い方によって以下の2種類に分類されます。

①:方策展開型
「方策」を展開していく系統図で、「目的と手段」の関係で枝分かれする構成です。

概念を大きいものから徐々に分けていくイメージで、一般的に系統図法として用いられることが多いのは、こちらの形式です。


②:構成要素展開型
「構成要素」を展開していく形式です。

例えば、会社の組織図のように、構成要素が決まっているものに対して、その要素を階層別に展開していく構成となっています。

要素の抜け落ちがないかどうか確認したいときに用いる手法です。

手順

方策展開型の系統図の作成手順について、解説します。

  1.  目標を設定する
  2.  一次手段を書き出す
  3.  二次手段以降を書き出す
  4.  全体の構成確認と文章化
  1.  目標を設定する
    まずは、達成すべき目標(目的)を設定します。

    先ほどの活用例でも説明したように、目標設定をどのくらい具体的なテーマにするかによって、その後の分類の大きさが変わってきます。

    具体的な手法を見つけ出したいのに、大きな枠組みの目標を設定すると、枝分かれが膨大になって、細やかな検討ができなくなるので、活動目的を踏まえて設定しましょう。

    また、制約条件がある場合は、この段階で目標の下に記載しておきましょう。

    例えば、人、カネ、もの、時間などの制約です。

  2.  一次手段を書き出す
    設定した目標に対して、達成するための手段を挙げていきます。

    「目標を達成するためには、どうすればよいか?」と問いかけ、手段の候補を抽出します。


  3.  二次手段以降を書き出す
    次に、二次手段から先を挙げていきます。

    先ほどと同じように、問いかけを繰り返し、二次手段、三次手段・・と分解していきます。


  4.  全体の構成確認と文章化
    手段の抽出が完了したら、全体として漏れがないか、つながりに不整合はないかチェックします。

    一つの目的に対し、一つの手段しか挙げられていない場合は、「本当にその一つしかないのか」確認し、充実化を検討しましょう。

    つながりの確認には、具体的手段(三次手段など)から目標に向かって階層をさかのぼり、「これを実施すれば、目的が達成できる」とチェックしながら進めると分かりやすいです。

    最後に、方策や新たにわかったことを文章化して残しましょう。

これで次にやることも、みんなで共有できるね

系統図を作るポイント

系統図を作るポイントを解説します。

  1.  目標設定に時間をかける
  2.  手段は一度に細かく分けすぎない
  3.  文章化までキチンとまとめる
  1.  目標設定に時間をかける
    目標設定の枠組みが適切でないと、手段の分類も活動の意図に沿ったものでなくなります。

    抽象的すぎないか、具体的すぎないか、検討メンバーでよく議論しましょう。

    いったん、一次手段まで分解した段階で、挙げられた手段が活動の意図に合致したものかチェックして、目標設定を見直すのも一つの手法と思います。

  2.  手段は一度に細かく分けすぎない
    手段を分解する際は、一つの目的に対して、二つ以上は挙げたいですが、あまり細かく分けすぎるもの良くないです。

    一度に細かく分類すると、階層の深いところまで掘り進めている可能性があり、網羅性を見失いがちになるので、全体のバランスを見ながら検討を進めましょう。

  3.  文章化までキチンとまとめる
    親和図法連関図法でも解説しました通り、図解化することが目的ではなく、そこから導き出した結論が、次の課題解決に向けたスタートになるので、最後までやり遂げましょう。

なお、要因抽出には、複数人でブレーンストーミング方式を活用するのも有効です。

ブレーンストーミングの注意点として、以下も参考にしながら進めると活発な良い議論ができると思います。
①:自由意見
 ⇒相手を否定せず、発言しやすい環境を整える
②:質より量
 ⇒言語データは質を意識しすぎると、発言を控えてしまう
③:判断、結論を急がない
 ⇒途中で抽象的にまとめてしまいがち
④:アイデアを統合して発展させる
 ⇒みんなでブラッシュアップする

こてつ経験談

改善策の検討を任され

この記事で紹介した「生産性を向上する」という題材は、実際に私が検討した案件の一つです。

当時のプロジェクトリーダーから素案の検討を任され、最初は思いつくままに選択肢を挙げていきました。

というのも、元より課題の多い現場であり、以前から、あれこれと問題点が見えていて、もっとこうしたらいいのに・・と、思うことがあったからです。

例えば、「2交代シフトにする」とか「材料を安いものに変える」とか、具体的な案が次々と出てきました。

ひとまず、いままで寝かせておいた、とっておきの改善手段のネタを5~6点ほど挙げ、素案を提出したのですが、残念ながら全く納得してもらえませんでした。

トップダウン思考ができず

まず、最初に指摘されたのは、そのネタで本当に全部を網羅できているのか、という点でした。

全体像が見えない中、個別の改善ネタだけが唐突に出てきても、それがどのような位置づけにあるものか分かりません。

また、ジャンル分けがないので、どの部門が主導するべきか分かりにくい、という点も指摘を受けました。

例えば、2交代シフトを推進する場合、製造や管理部門が主に対応する内容ですが、材料変更は設計部門の対応することが多いです。

やはり、いきなり具体的なネタの話をしても、唐突感が否めず、どうしても伝わりにくい資料になってしまっていたようです。

網羅性が一目でわかった

ここで、系統図法の登場です。

まず、具体的なネタをどんどん挙げたい気持ちを抑えて、上位の階層から徐々にばらす方法で検討しなおすことにしました。

できるだけ大きい単位で分類するよう心がけ、具体例に走っていないか、網羅的に抽出できているか、意識を保ちながら検討を進めました。

ひと通りの項目を挙げ、あらためて全体を見てみると、階層構造で非常に見やすいものになっていることに気がつきました。

これまで具体例しかなかったものが、階層を分類したことで、「原価」や「加工費」や「稼働時間」といった、改善のキーワードが散りばめらていたのです。

ようやく完成した素案を再提出して、何とかリーダーの首を縦に振ることができました。

ものごとは系統的に整理されていると、直感的に内容を理解しやすく、全体的な位置関係を捉えることができます。

私の中では、トップダウン思考を意識的に実践した初めてのことで、エンジニアとして一歩成長する機会になったと思います。

まとめ

  • 系統図
    ⇒目的と手段を系統的に整理して、樹形図のような形式に表した図
  • 系統図法
    ⇒系統図を用いて、目標を達成するための方策を整理する「トップダウン型」の手法
  • 目的・用途
    ⇒方策の追求、方策の分類・整理、情報の共有
  • 系統図を作るポイント
    ⇒①:目標設定に時間をかける
     ②:手段は一度に細かく分けすぎない
     ③:文章化までキチンとまとめる

目的と手段をトップダウン型の思考方法で展開する手法は、系統図法に限らず、論理的思考に重要な考え方です。

樹形図のように系統化して表現することで、頭の中を棚卸しできる有効な手法ですので、ぜひ実践してみてください。

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この記事を書いた人

【経歴】
関東在住、40代、製造業(品質部門)。
これまで、研究開発、設計、生産技術、仕入先の品質管理を手掛ける。

【保有知識・技術分野】
統計学、信頼性工学、品質工学。
半導体、基板、有機材料、金属、セラミックスの材料、製造、加工技術。
部品加工(機械加工、化学処理)、組立・実装技術、分析・物理解析技術。
QC検定1級保有。

【当サイトについて】
品質・生産の基礎知識をテーマに、用語の解説、使い方(作り方)、メリット、考え方のポイントを分かりやすく解説しています。
某メーカ様の品質教育用の資料としてもご活用いただいております。
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