抜取検査とは? 初心者必見!目的と種類、全数検査との違い

抜取検査

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「抜取検査ってどんな時に用いるの?」
「全数検査との違いが良く分からない」
「抜取検査の種類にはどんなものがあるの?」

このような疑問や悩みをお持ちの方に向けた記事です。

製造業に関わる方であれば、抜取検査という言葉を一度は耳にしたことがあるかたも多いのではないかと思います。

製品の品質を保証するには、できあがった製品の検査や試験を行い、規格値と照合して適合するか否かを判定する必要があります。

このとき、製品全部を調べていると大変な労力がかかるので、ランダムに抜き取った対象を検査することを抜取検査と呼びます。

この記事では、抜取検査を適用する目的とメリット全数検査との違い抜取検査の主な種類について、初心者のかたにも分かるよう、できるだけ難しい言葉を使わず解説しています。

ぜひ最後まで読んで参考にしていただければ幸いです。

抜取検査とは

抜取検査とは、製品の品質保証にあたって、対象となるロットからランダムにサンプルを抜き取って検査する手法のことです。

抜き取りの方法や数を決めるにあたっては、あらかじめ定められたルールにもとづいて検討します。

というのも、検査を行う側が自分たちの都合で無秩序に決めていては、抜き取りの頻度の妥当性や信頼度に客観性がなくなってしまうからです。

特にお客様からの品質要求に対して、どのレベルで満足できているのか定量的に示せないと、出荷後に不具合が出た際にトラブルのもとになりかねません。

生産者側の立場からすると、このくらいの頻度の不具合は許容してよ・・と思っていても、消費者側からすると、不具合は一切許容できない・・という認識のずれも多々あります。

とらまる
とらまる

あとから揉めると大変そうだ

こういった場合に、誰もが納得できるルールと定量的な判定基準を適用していれば、出荷可否の判断の妥当性を問われることもなくなります。

そのため、抜取検査の性質を押さえた上で、種類と特徴をきちんと理解し、適切な手法、適切な判定基準を設定することが、生産者側の責任として求められるのです。

目的・メリット

検査コストを抑えられる

抜取検査のメリットの中でも一番の狙いといっても過言ではないかと思います。

「抜取」と対比して登場するのは「全て」であり、やはり全数検査では膨大なコストと労力のかかることが、製造業に関わる多くの方にとっての悩みの種です。

コスト抑制を目的として、全数検査から抜取検査に切り替える事例も多く、この場合には十分に現状の品質レベルを把握して、適切な抜き取り頻度を設定することが求められます。

破壊試験ができる

全数検査との違いとしても特徴的なのが、抜取検査では破壊試験ができることです。

製品の筐体をこじ開けて内部の状態を観察したい場合や、破壊強度のデータを取得したい場合など、どうしても現品を破壊せざるを得ない状況において、抜取検査が有効です。

トレンド管理ができる

これは抜取検査や全数検査のどちらかに限定した話ではありませんが、ある一定数を決めて製品を抜き取り、品質データを積み上げていけば、トレンド管理に活用できます。

もちろん製品全数のデータを取得できるに越したことはないですが、毎日の生産の中から数個ずつを抜き取って蓄積するだけでも、万が一のトラブルに活躍することも多いです。

原因究明のきっかけになったり、品質データの変化のタイミングが浮き彫りになったり、時系列に沿ったトレンドデータから読み取れる情報量は侮れません。

全数検査との違い

さて、抜取検査とはどういったものか、目的とメリットはどんなものがあるのか理解できたところで、あらためて全数検査との違いに着目して抜取検査の特徴を整理しておきます。

破壊試験ができる

先ほどにも説明した通り、抜取検査では破壊試験ができます。

やはり、直接的に良し悪しを図ることができるのがメリットであり、破壊試験でしか品質を保証できないケースも少なくありません。

その一方で、破壊試験したものはもちろん出荷できないので、数を増やしすぎると良品率の低下を招いてしまいます。

特に製品一つの価格が高額なものは、むやみに破壊試験を適用することができず、間接的な方法で全数検査する方が逆にコストを抑えられる場合もあります。

そのため、抜取検査は製品コストが安価で大量に生産される製品に向いている検査方法と言えます。

連続体にも対応できる

ケーブルや液体など、製品が一続きになっているものに対しても、抜取検査が有効です。

理由は単純で、連続体の場合、製品が一続きになって生産ラインを流れてくるので、どこかで抜き取って検査せざるを得ないからです。

仮に、生産ラインに検査装置が組み込まれていて、インラインで品質データを取得できるのであれば、全数を見ることもできます。

しかし、オフラインの検査のように、いったん別のエリアに持ち出して検査する必要がある場合には、ある部分を切り取って抜き取りするしかありません。

不良の混入を許容しなければならない

抜取検査で忘れてはいけないのが、出荷した製品の中にある一定確率で不良品が混入しているということです。

これは当たり前の話なのですが、意外と抜取検査のメリットに目を奪われて見落としがちになります。

あくまで、確率論にもとづいて母集団の状態を推定しているだけで、抜き取ったサンプルの不良がゼロであっても、出荷したロット全てにおいて不良がゼロとは同義ではありません。

そのため、ロット保証の考え方が適用できる製品であることが前提ですので、これも覚えておきましょう。

例えば、材料のロットも使用設備も条件も異なるものが混在するロットで、抜取検査を行っても、代表サンプルを抜き取って検査したと言えるでしょうか。

このようなやり方が妥当でないことは直感的に理解できると思いますが、当然ながら前提条件の揃っている方がばらつきも小さくなり、ロットの代表である信頼性が高まるのです。

きちんと性質を理解すれば、抜き取りでも安心

抜取検査の種類と特徴

抜取検査には色々な種類があり、次のように検査項目の性質や抜取方式の違いによって分類できます。

検査項目の性質による分類

計数値抜取検査

計数値とは数えるもので、個数、件数、人数といった離散的に変化する値のことです。

抜取検査の場合、不適合品の数や、製品ひとつあたりの不適合箇所の数などが計数値にあたります。

つまり、計数値抜取検査は、例えば不適合品の数を集計して、ある一定の数を超えた場合にロット不合格と判定するような検査方法で、最も単純で分かりやすい検査の一つです。

計量値抜取検査

計量値とは測定して量るもので、温度、長さ、時間といった連続的に変化する値のことです。

計量値抜取検査では、得られた品質特性のデータから平均値や標準偏差を算出し、ある値を超えるか否かでロットの合否を判定します。

計数値抜取検査と比べて、検査結果から得られる情報量が多く、平均値や標準偏差を扱うことで工程のばらつきを把握することもできます。

また、計数値と比べて、抜き取りのサンプル数が少なくて済むメリットもあります。

その一方で、統計量を扱う煩雑さから、多少はサンプルサイズが大きくなっても、シンプルな計数値抜取検査を選ぶことも多いので、状況にあった手法を選択しましょう。

抜取方式による分類

規準型抜取検査

まず「規準」というフレーズに聞きなじみがないかもしれませんが、則るべき規則のことを意味しています。

つまり、合否判定の規準があらかじめ定められた検査方式のことを規準型抜取検査と呼んでいます。

では、その規準はどのように定めるのかというと、ここで不良の混入の考えが用いられるのです。

消費者側としては、本来は出荷すべきでない品質の悪いロットを見落として出荷されるリスクを抱えており、これを消費者危険と呼びます。

一方、生産者側としては、本来は出荷できる品質の良いロットを厳しく判定しすぎて、不良ロットと判定してしまうリスクを抱えており、これを生産者危険と呼びます。

これらは、検査の規準を緩くするか厳しくするかで相反する関係にあり、生産者と消費者の双方が納得する水準をあらかじめ決めておく必要があります。

規準型抜取検査では、品質の良いロット($p_{0}$)品質の悪いロット($p_{1}$)生産者危険($α$)消費者危険($β$)をそれぞれ数値で規定して、見逃しリスクを定量的に表すのです。

選別型抜取検査

選別型抜取検査とは、ロットが合格と判定された場合にはそのまま受け入れ、不合格と判定された場合には全数検査に切り替えて不適合品を良品と交換または修理する検査です。

これは不合格となったロットを救済するための検査方式です。

抜取検査の結果をそのまま受け入れて不合格とするよりも、全数検査で良いものだけを選別する方が時間的にもコスト的にもメリットがある場合に用いられます。

最初から全数検査をしたくないけれども、万が一、抜取で不合格になった場合には、良品だけは生かしたいという事情がある場合に有効です。

なお、あらかじめ全数検査に切り替える手順が組み込まれた検査方式のため、破壊試験が必要な場合には適用できません

調整型抜取検査

調整型抜取検査とは、これまでの検査実績を踏まえて、検査をゆるくしたり、厳しくしたり、柔軟に変更させる検査方法です。

品質として満足できる不良率をAQL(Acceptance Quality Limit:合格品質限界)として定め、これに対応する合格判定数/不合格判定数にもとづいて合否を判定します。

検査の種類は、なみきついゆるいの3段階に分かれ、同じAQLを保証する場合でも、きつい方がサンプルサイズは大きく、ゆるい方がサンプルサイズは小さくなります。

この検査方式は受入検査でよく取り入れられる考え方で、複数の仕入先の実力を比較したい場合などに有効です。

また、これまでの実績が十分にある仕入先に対して、多くの抜き取りを要求することはコスト的にも嬉しくないので、生産者の実力に応じて柔軟に設定できる検査方式と言えます。

コストと実力を見ながら適した手法を選ぼう

まとめ

  • 抜取検査
    製品の品質保証にあたって、対象となるロットからランダムにサンプルを抜き取って検査する手法
  • 目的・メリット
    検査コストを抑えられる
    破壊試験ができる
    トレンド管理ができる
  • 全数検査との違い
    破壊試験ができる
    連続体にも対応できる
    不良の混入を許容しなければならない
  • 抜取検査の種類
    計数値抜取検査:計数値(離散的な値)をもとに判定する抜取検査
    計量値抜取検査:計量値(連続的な値)をもとに判定する抜取検査

    規準型抜取検査:生産者危険、消費者危険をもとにした抜取検査
    選別型抜取検査:不合格ロットは全数検査に切り替える抜取検査
    調整型抜取検査:実力に応じて、なみ、きつい、ゆるいを選択する抜取検査

最後までご覧いただきありがとうございました。


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【経歴】
関東在住、40代、製造業(品質部門)。
これまで、研究開発、設計、生産技術、仕入先の品質管理を手掛ける。

【保有知識・技術分野】
統計学、信頼性工学、品質工学。
半導体、基板、有機材料、金属、セラミックスの材料、製造、加工技術。
部品加工(機械加工、化学処理)、組立・実装技術、分析・物理解析技術。
QC検定1級保有。

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