「マトリックス図法とは、どんなものか?」
「どんな場面で活用し、何のメリットがあるのか?」
「具体的な題材で作成手順を知りたい」
このような疑問・悩みをお持ちの方に向けた記事です。10分で理解できるよう、わかりやすく簡潔に解説します。
呼び方の馴染みは少ないかもしれませんが、表のような形式で点数付けする手法は、直感的に理解しやすく、情報をコンパクトに正確に伝えるうえで有効です。
活用するメリットや、行と列の要素を決めるコツを解説していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしていただければと思います。
また、Youtubeチャンネルでは、この記事の内容をさらに詳しく動画で解説していますので、あわせてご覧いただけると幸いです。
マトリックス図法って何?
まとりっくす?
マトリックス図法とは
行と列の軸に要素を配置し、その交点に関連の度合いを記号や数値で示した図を用いて、問題解決を効果的に推進する手法のことで、新QC7つ道具の一つとして活用されています。
マトリックス図の構成
以下に一例を示します。
行と列の軸には、以下の要素を入れます。
行:「問題点」や「選択肢の候補」などの項目
列:「原因」や「評価指標」などの項目
そして、行と列の交差する点には、◎、◯、△といった定性的な判定指標、もしくは数値などの定量的な判定指標を記載します。
つまり、「行✕列」の条件に対応する結果を表した図となっており、多次元の要素を一覧で分かりやすく表現できる便利な代物です。
代表的な型
先ほど紹介したものは、2つの軸の配置の形から、「L型マトリックス」と呼ばれており、もっとも一般的に用いられる様式です。
この他に、以下の種類があります。
・T型
3つの軸をT字型に配置したものです。
L型を2つ掛け合わせた様式です。
・Y型
3つの軸を立体軸に配置したものです。
「要素a✕要素b」「要素b✕要素c」「要素c✕要素a」のそれぞれの関係を表した図となっています。
・X型
Y型をさらに発展させて、4つの軸を二次元的に配置したものです。
「要素a✕要素b」「要素b✕要素c」「要素c✕要素d」「要素d✕要素a」の関係を表した図となっています。
要素の数に合った型を選ぶんだね
なぜマトリックス図法を使うの?
目的・用途・メリット
- 項目の比較評価
列の要素に評価指標の項目を取ることで、行に配置した項目(選択肢の候補など)を点数付けして順位をつけることができます。
定量的な判定基準を設けることで、より客観的な基準で項目を選ぶことができます。 - 影響要因の分析
列の要素に原因系の項目を取ることで、行に配置した項目(問題点など)との関係性を表すことができます。
例えば、不良内容と原因を要素とすれば、製造工程の弱点の分析などに活用できます。 - 情報の共有
図式化して情報資産として残すことで、第三者と情報を共有する際にも活用できます。
どんな場面で使うの?
関連性のある2軸の要素を取れば、どんな分野でも活用できる汎用的な手法ですが、ここでは製造業での活用例の一部を紹介します。
【活用例①】生産性改善の対策案のランク付け
例えば、生産性の改善は、製造部門だけでなく、研究開発、設計、調達も含めて、すべての部門に通じる活動テーマです。
このような大きい枠組みの場合、コスト面、技術面など色々な視点での対策案の候補が出てきて、どのように候補を絞ればよいのか、困ることはないでしょうか。
判定基準も一つではなく、実現性、効果、即効性など、色々な基準で総合的に点数付けして、もっとも総合点の高い候補を選ぶことが、職場のメンバーの合意を得やすいことと思います。
こういった状況でマトリックス図法が大いに効果を発揮します。
例えば、以下のように、「選択肢の候補」と「評価指標」を要素とします。
どの候補が最適なのか、一目で分かり、そして誰もが納得できる「総合判定の結果」として結論を出すことができます。
【活用例②】歩留り悪化要因の分析
今度は、問題点と原因の関係を見る使い方として、「生産効率が悪い」という問題点を具体例に解説します。
「多くの問題点から、何か共通性があるのか、弱点を見つけて方針検討の参考にしたい」という場合にも活用できます。
例えば、以下のように、「問題点の項目」と「原因系」を要素とします。
原因系の要素には、系統的に分類できる項目を取ると、弱点の分野として分かりやすくてよいです。
例えば、4Mの要素として、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)に分類して、問題点との関係性の強さを「◎、○、△」で点数付けすれば、点数の高い分野がまさに弱点ということになります。
弱点が分かれば、今後の方針検討の軸になりますね。
2つの活用例を紹介しましたが、いずれも候補を絞って優先順位を付けることに有効です。
候補となる手段を網羅的に挙げて整理する手法としては系統図法が有効です。
系統図法で課題を解決するための手段を網羅的に抽出し、マトリックス図法で点数付けして絞るという流れは、効率的で相性のよい手法です。
「系統マトリックス図法」として、とても有効な手法ですので、ぜひお試しください。
組み合わせて使うこともできるんだ
どうやって作るの?
L型マトリックス図の作成手順について解説します。
手順
- 軸の要素を決める
- 型を決める
- 行と列に項目を配置する
- 交点に関連の度合いを記入する
- 対策・方向性を決める
- 軸の要素を決める
まず、目的を整理し、軸とする要素を検討します。
選択肢の優先順位を付けたいのか、影響要因を分析したいのか、目的によって列にとる要素は変わってきます。
今回の事例では、「選択肢の候補」と「評価指標」を要素とします。 - 型を決める
次にマトリックスの型を決めます。
L型、T型、Y型、X型の中から、要素の数や、評価したい要素の組合せによって、目的に合ったものを選びます。
今回は、2軸で構成するので、L型を選択します。 - 行と列に項目を配置する
行と列の要素に、項目を配置していきます。
項目を配置したら、内容に重複がないか、評価指標の網羅性に問題ないか、確認しましょう。
特定の分野が多く盛り込まれていたり、抜け漏れがあると、客観性のあるデータとは言えません。 - 交点に関連の度合いを記入する
項目の配置が完了したら、交点に関連の度合いを記入します。
◎、◯、△といった定性的な判定指標、もしくは数値などの定量的な判定指標を用いて、行と列の交点に結果を埋めていきます。
関連の度合いを記入していく中で、行と列の項目に不足が見つかった場合は、さらに追加していくとよいです。
結果を全部記入できたら、点数を集計してランク付けをしましょう。
これで完成です。 - 対策・方向性を決める
最後に、分かったことや、次にやるべきことを整理しましょう。
優先順位をどう付けられたのか、要因の共通性は見いだせたのか、結論までたどり着ければ目的は達成です。
マトリックス図を作るポイント
- 客観的に評価できる要素を選ぶ
- 評価指標は網羅性を意識する
- できるだけシンプルな型を選ぶ
- 客観的に評価できる要素を選ぶ
要素を選ぶときは、客観的な評価ができること、項目どうしを比較しやすいことに注意し、だれが見ても納得のいく判定とすることを心がけましょう。
結果に主観が入りすぎると信ぴょう性がなくなり、せっかくマトリックス図で一覧化して整理しても、意味のないものとなってしまいます。 - 評価指標は網羅性を意識する
作り方の手順でも説明しましたが、網羅性は重要なポイントです。
項目に偏りがあると、もちろん集計結果にも偏りが生じ、公平性が保たれなくなります。
要素を決めて項目を挙げる段階で、マトリックス図の質がほぼ決まるといっても過言ではないので、常に網羅性を意識しておくことが大事です。 - できるだけシンプルな型を選ぶ
Y型やX型のような複合型は、本当に必要な場合は、もちろん活用するべきですが、できるだけシンプルな型を選ぶことも重要です。
一度に多くの要素を説明しようと無理すると、複雑で分かりにくくなるので、シンプルなL型で一つひとつの関係性を着実に整理する方が近道な場合もあります。
スッキリ分かりやすくを心がけよう
こてつ経験談
どの部門が主導?
系統マトリックスが活躍した話をご紹介します。
系統図法でも紹介した「生産性を向上する」という話の続編です。
さて、改善策を網羅的に挙げるだけでも一苦労でたどり着いたのですが、そこから先にも課題が待ち受けていました。
「どの改善ネタを重点テーマとして選定するか?」です。
重点テーマとして選定された主担当の部門は、その後、強烈なフォローを受けることになり、正直、どの部門も選ばれることを嫌って、なすり付けをすることになるのです。
みんなが納得するために
このような状況において、客観的な指標で優先順位をつけることは有効です。
系統マトリックス図法を用いて点数化し、点数の高い上位3つを重点テーマとして選定することにしました。
判定指標に「実現性」「効果」「即効性」を挙げ、総合点としてもっとも高い案件を選ぶことで、みんなが納得して決めることができたのです。
そもそも、この話は、組織間の壁をなくすことが根本的な課題と思います・・。
ただ、どの部門も一方的に業務を押し付けられると不利益を受けるので、現実問題として壁を完全になくすことは難しいです。
反対に、仮に自分たちが選ばれたとしても、納得のいく形で決めたのであれば、あとは解決に向けて全力を注ぐだけです。
共通の目標を掲げ、みんなで同じ方向を目指すことは組織として重要なことなので、今回のお話が少しでも参考になればうれしいです。
まとめ
- マトリックス図法
⇒行と列の軸に要素を配置し、その交点に関連の度合いを記号や数値で示した図を用いて、問題解決を効果的に推進する手法
行:「問題点」「選択肢の候補」など
列:「原因」「評価指標」など - 目的・用途
⇒項目の比較評価、影響要因の分析、情報の共有 - 作るポイント
⇒①:客観的に評価できる要素を選ぶ
②:評価指標は網羅性を意識する
③:できるだけシンプルな型を選ぶ
雑然とした情報を行と列の2軸に分類して図示化するだけで、驚くほどスッキリとまとまり、相手への伝わりやすさも大きく変わってきます。
うまく優先順位を付けられずに困っている方は、ぜひ活用してみてください。
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