「設計品質と製造品質の意味を知りたい」
「他に○○品質ってどんな分類があるの?」
「知っておくべき用語をまとめて教えてほしい」
こんな疑問や悩みをお持ちの方に向けた記事です。
品質には、広義と狭義、設計と製造、顧客視点での満足度など、多くの分類があり、それぞれ「○○品質」という名称で定義されています。
業務の中で急に登場しても、言葉の意味が分からないと、内容が入ってこないですよね。
この記事では、製造業に関わる方が最低限知っておくべき品質の分類と用語について、まとめて解説しています。
品質の定義
広義の品質
JIS Q 9000:2006によると、品質とは以下のように定義されています。
本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度
引用元:JIS Q 9000:2006(品質マネジメントシステムー基本及び用語)
何だか難しくて理解できない
「特性」というのは、そのものが持つ特有の性質のことで、「要求事項」というのは、顧客や利害関係者が期待すること(ニーズ)を表します。
つまり、上記の定義を平たく言い換えると、「製品の機能がどの程度、顧客のニーズを満たしているか」ということになります。
ここでいうニーズには、Qualityとしての狭義の品質だけでなく、Cost(価格)、Delivery(納期)も含まれます。
QCDの3要素の揃った製品こそが、顧客の満足度が高く、広義の意味での高品質の製品と言えます。
品質保証とは
同じくJIS Q 9000:2006によると、品質保証とは以下のように定義されます。
品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部
引用元:JIS Q 9000:2006(品質マネジメントシステムー基本及び用語)
つまり、「品質の要求事項(要求仕様)を満たすことを約束するための組織活動」と言い換えられます。
この製品は高品質だとか、品質面で問題ないとか、「品質」という表現は製造業の様々な場面で登場します。
しかし、あくまでも、品質が高いとか、問題ないとか思っているのは自分の主観であり、それだけでは何の信用もありません。
製造元には、製品の品質が要求事項を満足することを、責任を持って宣言する義務があります。
このような組織としての約束事を「保証」という言葉で表現しているのです。
そして、品質保証による信頼関係を構築した先に、顧客から「高品質」という評価が与えられるのです。
担当部門で分類する品質
設計や製造など、主導する部門で分類する品質について紹介します。
企画品質
製品の企画段階で作りこまれる品質で、顧客のニーズを踏まえて検討した製品コンセプトの質を表します。
マーケットインという言葉をご存じでしょうか。
消費者のニーズを汲み取って、その期待に応えるような商品を市場に提供するモノづくりの基本的な考え方の一つです。
製品企画は開発の原点にあたる部分で、このステップを軽視すると、高品質なのに全く売れないものになってしまいます。
設計品質(ねらいの品質)
製品企画を踏まえて、設計図や製品仕様書などに定める品質のことです。
設計技術だけでなく、作りやすさやコストなど、QCDを考慮して製品仕様の目標として規定した品質のことで、「ねらいの品質」とも呼ばれています。
設計図や製品仕様書に記載される性能や規格値など、具体的な数値として扱う項目も設計品質の一つです。
品質の良し悪しは、製品企画をどれだけ反映したものになっているか、という観点で評価されます。
製造品質(できばえの品質)
設計したものを実際に製品に仕上げた時の品質で、「できばえの品質」や「適合品質」とも呼ばれます。
設計品質は、設計図などに規定すると自発的に変更しない限りは、変わることはありません。
これに対して製造品質は、5M+1E(Man、Machine、Material、Method、Measurement、Environment)の要素に影響を受けながら、日々変化していきます。
そして、顧客に提供されるのは、企画品質でも設計品質でもなく、製造品質(現品)そのものであることを忘れないようにしましょう。
どんなに良い企画、設計を行っても、生産現場の予期せぬ変化の影響で、実物の出来栄えが悪かったとしたら、市場から低評価を受けるのは言うまでもありません。
そのため、設計図で定めた通りの仕上がりになっている、つまり「製造品質の高い状態」を常に維持できるように、生産現場を管理していく必要があるのです。
使用品質
製品が実際に顧客の手に渡って、使用した時に初めて分かる品質のことです。
悪い例で言うと、例えば、市場での環境負荷や長期使用に伴う故障などが該当します。
仮に、出荷段階では、ねらいの品質を満足する出来栄えであったとしても、いざ顧客が使う時に壊れていては意味がありません。
顧客が製品を使い始めてから使い終わるまで、つまり保証期間をまっとうするまで品質を維持することが、顧客の満足度に繋がります。
そのため、製品寿命を考慮した設計や、製造工程でのスクリーニングなど、適切なプロセスを経ることが、最終的な使用品質の向上に結び付くのです。
どの品質も欠かせないね
顧客視点で分類する品質
次に、顧客側の視点に立って分類する品質について紹介します。
ここで、狩野モデルが参考になります。
東京理科大学の狩野教授によって提唱されたモデルで、以下の図で表現されます。
当たり前品質
あって当然の品質のことで、顧客にとっては特にうれしいと感じるものではありません。
しかし、反対に満たされないと不満を与えてしまうもので、最悪の場合、クレームに繋がりかねないので注意が必要です。
扇風機を例に挙げると、送風の機能が備わっていることが当たり前の品質にあたります。
コレクションとして集めるような一部のマニアの方でない限り、ほとんどの方は、送風のために扇風機を購入しますよね。
なのに、大前提の送風ができないとなると、直ぐにクレーム案件になることも容易に想像いただけると思います。
一元的品質
あるとうれしい、ないと不満を感じる品質のことです。
例えば、音が静かとか、質量が軽いといった要素が一元的品質に該当します。
音が静かだとうれしい、反対にうるさいと不満。軽いとうれしい、重いと不満。といったように、機能の充足と顧客の満足に相関性のあるような場合です。
魅力的品質
なくても不満はないが、あるとうれしいといった品質です。
例えば、羽の無い扇風機などが、これに該当します。
この要素が無くても扇風機としては十分に機能していますが、要素が加わることで顧客の満足度が格段に上がります。
簡単に言うと、差別化の要素ですね。
無関心品質
あっても、なくても顧客の満足度に影響しない品質のことです。
例えば、扇風機の内側の部品に小さな傷が入っていたとします。
送風の機能には何の影響もなく、外側から見て目立つ傷でもなければ、ここに目くじらを立てる人は少ないと思います。
仮に、製造メーカの方で、このような傷もすべて不良品として廃却していたら、どうでしょう。
製品の機能や見栄えに何の影響もないのに、まともに良品が作れない状態になってしまいます。
これを過剰品質と言い、不要なロスコストや管理コストを生み出すので、注意が必要です。
逆評価品質
あると、反対に顧客の満足度を下げてしまう品質のことです。
色やデザインなど、人によって好みの変わる場合などが当てはまります。
まずは当たり前品質から、できれば魅力的品質を目指そう
品質特性と代用特性
工程管理に登場するキーワードとして、2つの「特性」を紹介します。
品質特性
JIS Q 9000:2006によると、品質特性とは以下のように定義されています。
要求事項に関連する、製品、プロセス又はシステムに本来備わっている特性
引用元:JIS Q 9000:2006(品質マネジメントシステムー基本及び用語)
簡単に言うと、品質評価の対象となる要素のことを表します。
具体的には、寸法や硬度など、直接的に製品の性能として測定が可能なもののことで、「真の特性」とも呼ばれています。
代用特性
一方で、品質特性を直接的に測定することが困難で、その代用として用いられるのが代用特性です。
例えば、破壊試験で製品の状態を直接的に確認できない場合に、音響インピーダンスや赤外線スペクトルなどで判別する方法が該当します。
間接的に確認できるメリットがある反面、代用特性と品質特性の相関性を失ってしまうと全く意味のないものになるので注意が必要です。
音響インピーダンスの数値は問題がなかったとしても、実は校正が取れていなくてゼロ点がズレていた、なんていうことの無いように、維持管理活動が大切です。
まとめ
- 品質
⇒製品の機能がどの程度、顧客のニーズを満たしているか - 品質保証
⇒品質の要求事項(要求仕様)を満たすことを約束するための組織活動 - 担当部門で分類する品質
⇒企画品質
設計品質(ねらいの品質)
製造品質(できばえの品質)
使用品質 - 顧客視点で分類する品質
⇒当たり前品質
一元的品質
魅力的品質
無関心品質
逆評価品質 - 品質特性
⇒品質評価の対象となる要素のこと - 代用特性
⇒品質特性の測定が困難で、その代用として用いられる要素のこと
普段聞きなじみの少ない言葉で、単語から意味を類推するのが難しいものもあります。
丸暗記しようとすると、なかなか覚えられないもので、大きい枠での分類や意味を理解することから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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