こんにちは、サイト運営者のこてつです。
製造業に勤務して十数年。社内異動を重ねて、研究開発からモノづくりの現場まで手掛けてきたプロセスエンジニアです。
「このサイトについて」でも紹介しております通り、未来ある若手エンジニアの方に向けて、品質管理と生産技術の基礎知識をお届けしています。
まだまだ仕事に不慣れな、あるいは自分の担当業務を上手く回せるようになってきた、20代の若手エンジニアの皆さん。
「社会人になっても勉強が必要なのか?」
「どういう手法で勉強すればよいのか?」
「製造業のエンジニアに効率的な勉強方法を知りたい」
このような疑問や悩みをお持ちではありませんか?
私自身、入社して間もない頃は、次のような考えをもって行動していました。
「仕事は仕事、プライベートはプライベート。メリハリが大事」
「仕事に必要な知識は、仕事(OJT)で身につけるのが一番」
「そもそも、社会人になってプロとして稼いでるんだから、これ以上何が必要?」
結果として、会社から一歩出ると、1ミリも仕事のことを考えないようにしたのです。
毎日忙しいから言い訳したくなるよねぇ
この記事では、大学と同時に勉強まで卒業したエンジニアの末路、社会人の自己啓発の現状、自己啓発が必要な理由とメリット、効率的な勉強方法の例について紹介しています。
結論を先に言います。
エンジニアが勉強を辞めると、40歳を過ぎた頃に、自分より若い上司から指示を出され、もっと若い平社員が日々成長していく姿をただ見ている苦悩の生活が待っています。
「失敗なくして成長なし」という言葉がありますが、皆さんが自分の人生を賭けてまで、この「失敗」を経験することは、あまりにも犠牲が大きいです。
若手エンジニアの皆さんが、10年後、20年後になって後悔することのないように、考えや行動を振り返るキッカケとして、少しでも参考になればうれしいです。
勉強しないエンジニアの末路
さて、会社以外で仕事のことを考えるのを辞めた私は、その後どうなったでしょう・・。
幸い、周りからの刺激や直感的な危機感を覚えたことで、この生活は長くは続かずに終わりました。
もし、勉強しない意思を強く貫き通していたら、社内異動の話も、若手を指導する立場としての現在のポジションも無かったでしょう。
しかし、大企業病の悪いところではありますが、残念ながら、自己啓発を全くしない生活を10年も20年も貫いているエンジニアも存在するのが現実です。
そして、強靭な精神力を持っていれば別ですが、やはり年下の上司からの指示や、周囲からの「できないオジサン」のレッテルに耐えられず、中年になってからメンタルを崩す例も少なくありません。
そりゃ、一日の大半の時間を過ごす会社生活で、常に肩身の狭い思いをすることは、想像するだけで会社に行くのが嫌になりますね・・。
ベテランになっても気苦労が多いんだ
自己啓発の実態
ここで、社会人の自己啓発の実態について紹介します。
以下は、厚生労働省が発表する「能力開発基本調査」の令和2年度の結果を元に作成したグラフです。
一年間の自己啓発の実施時間、自己負担費用、年代別のデータが調査結果として紹介されています。
①:実施時間
労働者全体の平均時間は年間で40.7時間、一日の平均にすると約6分です。
スマホの平均使用時間が一日で2~4時間くらいと言われているのと比較すると、圧倒的に短いですね。
②:自己負担費用
自己啓発に使った自己負担の費用は、年間ゼロ円が何と38%。
年間2万円未満を合わせると全体の3/4以上を占めています。
新生銀行の発表する2021年版の「サラリーマンのお小遣い調査レポート」によると、1か月の平均の飲み代は13,229円とのことです。
年間にすると16万円近くになりますが、行きたくもない飲み会の費用を数回ほど自己啓発に回すだけで、勉強熱心な人の仲間入りができますね。
③:年代別のデータ
年代別では以下のようになっています。
50歳を超えると、家計の余裕が生まれるからなのか分かりませんが、少し支出金額が増えている傾向です。
しかし、年齢が進むにつれて勉強時間が短くなる傾向であり、やはり時間を確保できないことが結果に表れているのかもしれません。
ここまで見ても分かるように、個々人の事情はあれども、自己啓発に十分な時間とお金をかけていると自信を持って言える方は少ないのではないでしょうか。
長期投資は早く始めた方が有利
金融商品の「複利」の効果が大きいことは、聞いたことのある方も多いことと思います。
例えば、金利が10%の場合、1年では1.1倍にしかなりませんが、10年の複利だと2.6倍になります。
自己投資の場合、年齢によって知識の吸収率(記憶力や頭の回転など)や学習時間が異なるので、成長率は一定ではありません。
しかし、自己投資は基本的にマイナス成長になることは無く、早く始めるほど将来の差が埋められないものになっていきます。
先ほどの自己啓発のデータから、周りと同じように何もしない選択をするのか、先に抜け駆けして将来の大きな成果を得るのか、選択は自由です。
ただ、ある程度の年齢になってから圧倒的な差をつけられていることに気づいても、その差を埋めるには、スタート時点の何倍もの努力が必要なことを覚えておいてください。
腰が重たくない若いうちに、いかにして最初の一歩を踏み出すかが、将来の健全なエンジニア生活の保証に繋がるのです。
早いうちにしっかりと土台を作ることが大事だね
エンジニアの自己啓発の目的とメリット
それでは、私たちは危機感のためだけに勉強するのかというと、きちんとメリットはあります。
何のためにエンジニアが勉強するのか、目的とメリットを3つ紹介します。
1.市場価値を高める
普段、会社に所属していると気づきにくいのですが、サラリーマンは会社の看板や肩書を背負って仕事をしています。
初めてコンタクトを取った相手企業から、即日で返信が来たり、長年の付き合いで納期やコストなどの融通を利かせてもらったり、当たり前のように見過ごしていませんか。
これらは、会社の看板があってのブランドで、個人の能力とは異なることを忘れてはいけません。
そして、本物の能力(資産)を獲得するには、やはり自己投資を重ねるしかないのです。
日頃から「個人のブランド力」を意識することで、どこに行っても通用する人材を目指しましょう。
2.視座を高める
視座とは、物事を見る立場のことを表します。
つまり、視座を高めるというのは、より上の立場から物事を捉える、あるいは、より長期的で幅広い観点から物事を捉えることを意味します。
例えば、このサイトで紹介する品質の基礎知識に関しても同じことが言えます。
QC的な考え方は、毎日の業務の中で実践することは少ないかもしれません。
だからといって必要ない訳ではなく、組織としての品質保証体制のあるべき姿や、モノづくりの仕組みを知ることができます。
これは、組織の長や管理職層の立場でのモノの見方に繋がるもので、すなわち知識を獲得することで、自分の視座を高めることができます。
視座が変わると、同じ情報とは思えないくらい見え方が変わってくるので、情報を効率よく吸収することができるようになります。
3.社内の昇進の機会を増やす
やはり、昇進はサラリーマンの大きなモチベーションの一つになります。
自己満足だけではなく、客観的にも努力の成果を認められた証であり、ステップアップを目的として自己啓発をする方も少なくないことでしょう。
そして、客観的に評価されるためには、資格を取得することも選択肢の一つに入れておいてもよいでしょう。
普段の業務から一回り手を広げて、資格を取るための勉強が必要になりますが、長期目線で考えると、結果としてステップアップの近道になったり、個人ブランドの肩書の一つになったりと、メリットも大きいです。
どういう手法で勉強すれば良いのか
では、どのような手段で勉強すればよいのか、選択肢をいくつかご紹介します。
1.ネットで調べる
まず気軽にできるのは、ネットで調べることではないでしょうか。
いまや何か分からない言葉があっても、「○○とは」で検索すると一瞬でたくさんの解説記事を見つけ出すことができます。
このサイトも気軽に情報を収集したい方に向けて発信しており、できる限り詳しく、かつ初心者の方にも分かりやすいように要点を簡潔にまとめることを心がけています。
ただし、ネットで調べる場合、キーワードごとの断片的な検索になりがちで、とある分野の全般的な知識を獲得したい方や、資格取得を目指す方には、網羅性に欠けているかもしれません。
メリット:無料でいつでも調べられる
デメリット:検索方法に依存するので断片的な情報になる可能性あり
2.書籍
ネット検索で全体像を把握できないことに不満をお持ちの方には、書籍で学習することがおススメです。
書籍の場合、特定の分野に関して章立てて解説されているので、学習範囲の全体像が見えやすいことがメリットです。
どこからどこまでの領域を学習すれば良いのか、ゴールとなる範囲が明確でないと、日々の学習の計画も立てにくくなります。
その点、書籍では、とある分野の基礎知識が一冊にまとめられているので、毎日ひとつずつ項目を読み進めていけば、どのくらいの期間で習得できるのか、イメージが付きやすいですね。
メリット:全体像を押さえつつ、とある分野の基礎知識をまとめて習得できる
デメリット:書籍の購入費用がかかる(数千円程度)
3.通信講座
ネットや書籍の場合、自分ひとりで学習することになるので、不明点があっても自分で解決しなければなりません。
また、勉強するもしないも自分の気持ち次第なので、意思が弱いと継続できずに中途半端で終わってしまいます。
そういう方には、通信講座がおススメです。
通信講座の場合、定期的にレポートを提出することで、計画的な学習を継続することができます。
また、レポートの添削を通じて弱点を把握できたり、質問券を使って不明点を問い合わせたりすることも可能で、自分に合った能動的な学習ができます。
費用は少しかかりますが、短期集中で効率よく学習したい方にとっては、費用対効果が十分に期待できるかもしれません。
メリット:レポートや質問券など、自分に合った能動的な学習ができる
デメリット:受講費用がかかる(数万円程度)
4.誰かに聞く
とにかく、調べる時間もお金もかけたくない、という方は、信頼できる先輩や周りの有識者に聞いてみましょう。
アナログな方法ですが、会話のキャッチボールをしながら直接やり取りできるので、実は不明点を解消するのに一番効率が良いです。
しかし、とある分野を網羅的に教えてもらえるわけではないので、情報に偏りがあることも事実です。
そもそも、相手の貴重な時間を使っていることも忘れないようにしましょう。
働き方改革が推奨される中、長いあいだ相手を拘束することは、周りにも相手にもあまり喜ばれることではありません。
メリット:不明点を直接質問して解消できる
デメリット:情報に偏りが出る、相手の時間を消費する
品質管理の通信講座
製造業のエンジニアには、JTEX(職業訓練法人日本技能教育開発センター)の通信講座がおススメです。
とにかく技術系の講座が豊富で、約200の講座が開講されています。
もちろん実績も50年以上と経験豊富で、利用企業は6000社以上にのぼり、東京都知事の認可を受けた職業訓練法人です。
教材到着後、未開封で8日以内ならクーリングオフの制度もあるので、もし希望に叶わない場合でも安心できますね。
ちなみに、200以上もある講座から、自分に合ったものを探すのが難しいとお悩みの方には、おススメの講座5つを以下に挙げておきます。
このサイトをご覧の皆さまは、品質管理や生産技術に興味のある方が多いと思いますので、特に若手エンジニアの方に学習してほしい講座を選んでいます。
講座名 | 価格(税込) | 難易度 | 教材 | こんな方におススメ |
現場で役立つ QC検定2級 受験準備コース(過去問題集付き) | 26,400円 | 中~上級 | テキスト4冊 過去問6回 レポート4回 |
QC7つ道具や統計的手法を活用して実際の問題解決を図ろうと考えている方 |
現場で役立つ QC検定3級 受験準備コース(過去問題集付き) | 22,000円 | 中級 | テキスト2冊 過去問6回 レポート3回 |
QC7つ道具や統計的手法を基本から習得したい方 |
豊富な具体例で学ぶFMEA・FTA入門 | 22,000円 | 初級 | テキスト1冊 レポート3回 |
ご自身の業務に合ったFMEAやFTAの具体例をお探しの方 |
生産管理シリーズ「品質管理と原価管理」 | 23,100円 | 上級 | テキスト2冊 レポート4回 |
品質管理、統計学、原価管理まで幅広い分野を基礎から徹底的に学びたい方 |
トヨタ生産方式入門 | 16,500円 | 初級 | テキスト1冊 レポート3回 |
トヨタ生産方式の基本と改善のポイント、具体的な導入事例をお探しの方 |
品質管理検定(QC検定)は、その名の通り、品質管理に関する知識レベルを図る試験です。
品質保証体系やQC的な考え方など、仕組みや概念的な知識の他、QC7つ道具や統計学に関する知識も対象であり、基礎知識と実践に役立つツールの使い方がバランスよく含まれています。
資格取得を推奨する企業も増えており、受験者数は年々増加しています。
日本規格協会グループの発表するデータによると、2019年の受験者数は約62,000人で、2010年頃と比べても2倍以上に増えており、企業の認知度も年々高まっている状況です。
資格を取得すればキャリアアップや転職にも有効で、チャレンジしてみたいという方はきっと今後のエンジニア人生の中で役立つと思います。
あるいは、資格取得を考えていなくても、QC検定では知識と実務を総合的にバランスよく学習できるので、一通りの内容を習得しておくことをおススメします。
QC検定3級:品質管理の基本的な要素が多く、主に若手エンジニア向け
QC検定2級:専門的な要素が多く、リーダークラスの中堅層やリーダー層を目指す人向け
なお、今回紹介した通信講座はいずれも数万円程度の費用がかかるので、決して気軽に購入できるものではありません。
そのため、先ほど説明した学習方法のメリットとデメリットを踏まえて、費用対効果を考えて受講を検討してください。
どの講座もテキスト数冊分や過去問などが含まれているので、書籍代だけでも1万円近くの価値は十分にあると思います。
あとは、書籍代以外の商品価値としてレポートの添削や質問を通してのやり取りですが、講師の方の時間単価を考えると、個人的には親切な価格設定ではないかという感想です。
日々の学習時間にもよりますが、学習期間は数か月ほどのものが多いので、その期間の自己啓発の費用と考えれば、それなりの価値を見い出せるのではないでしょうか。
品質管理の書籍
いきなり通信講座は予算面でちょっと・・という方は、品質管理の教科書を持っておくことも選択肢の一つです。
以下の3つの書籍は、品質管理の基本的な考え方や実用的な手法が幅広く紹介されています。
書籍名 | ページ数 | 主な内容 | こんな方におススメ |
2015年改定レベル表対応 |
590 |
品質経営の要素 |
QC7つ道具や統計的手法を活用して実際の問題解決を図ろうと考えている方 |
2015年改定レベル表対応 |
291 |
品質経営の要素 |
QC7つ道具や統計的手法を基本から習得したい方 |
トヨタ必須の17の品質管理手法を伝授 品質の教科書 |
296 |
品質の基本的な考え |
トヨタ方式の品質の考え、QC7つ道具や統計的手法、分析手法など幅広い知識を基本から習得したい方 |
教科書や参考書として、会社のデスクに常備しておけば、分からない用語やツールの使い方を調べたい時に大変便利です。
QC検定2級と3級の本は、それぞれの級に対応した内容が解説されています。
基本的に2級は3級の内容を包括していますが、3級の知識を習得済みの前提とされているので、初心者の方がいきなり2級の内容だけ見ると少し難しく感じるかもしれません。
ひとまずは、3級から始めるか、将来的に基本から応用まで幅広く習得することを考えている方は、両方備えておくと辞書代わりに重宝します。
社会人になっても「継続は力なり」だね
まとめ
よく子どもの頃に、「なんで勉強しないといけないの?」と疑問に思った経験のある方は多いのではないでしょうか。
自分の将来の選択肢を広げるために自己投資は必要で、誰かが代わりにやってくれるわけでもなく、皆さん自身が行動のキッカケを作って継続していかねばなりません。
長い社会人生活の中で、コツコツと若いころから知識を積み上げたエンジニアと、そうでない人、将来の可能性の差は言うまでもないですね。
いきなり土日の全てを勉強時間にしたり、多額の費用を捻出したり、無理する必要は全くありませんが、日々の生活での隙間時間やムダ遣いを少し減らして、自己投資の元手にしてみてはいかがでしょうか。
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