5ゲン主義とは?若手から管理職まで実践すべき3つのメリット

QC的な考え方

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モノづくりの現状を正確に把握する考え方として、三現主義という言葉があります。

三現とは「現場」・「現物」・「現実」を表し、現場でモノをよく見て現実を把握することを重要視した考え方です。

さらに、「原理」・「原則」の2つのゲンを加えて、5ゲン主義と呼ばれます。

この記事では、5つのゲンの意味、5ゲン主義の考え方が活きる場面、実践することの重要性を解説しています。

最後まで読んでいただければ、すぐに行動に移すことの必要性を理解してもらえると思います。

モノづくりの現場部門からスタッフ部門まで、品質意識の底上げを課題と考えている方々にとって、参考になればうれしいです。

三現主義とは

三現とは「現場」・「現物」・「現実」を表し、現場でモノをよく見て現実を把握することを重要視した考え方です。

逆に言うと、デスクや会議室など机上の検討だけで議論していては、現状の実態を正確に把握できないということです。

現場重視の考え方は、むかしフジテレビで放送されたテレビドラマ「踊る大捜査線」でも名言が出てきますね。

とらまる
とらまる

事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!

①:現場

当たり前の話ですが、モノづくりは製造現場で行われています。

その実態を正確に捉えるには、「その場」で事実を直接見ることが最も手っ取り早いことは容易に想像がつくと思います。

会議室であれこれ想像を膨らませて議論しているよりも、まずは直ぐに現場に駆けつけて状況を肌で感じ取ることが重要です。

②:現物

データや写真だけでは、モノの実態のすべてを表しきれません。

そんなところに意外な手がかりが隠れていたりするもので、これは「現物」を見ないことには捉えられません。

データの取得には、主観性と客観性の二つの側面があります。

計測器やカメラなど、決められた装置と手順で実施すれば、誰が取ってもほぼ同じデータを再現よく取得できます。

ただし、測定する部位の選択や、記録の要否など、作業者の判断に依存することから、主観性が入ることは避けられません。

そのため、状況を把握する側が実物を見て、データには表れない細やかな特徴に気づくことが求められるのです。

③:現実

モノ以外に、「現実」に目を向けることも必要です。

現実とは、現在の状況を表しており、作業者や装置の状況などが当てはまります。

例えば、とある製品の製造不良が多発したケースを想定してみましょう。

直ぐに現場に駆けつけて、現物の状態を確認すれば、どのような内容の不具合であったのか、把握することができます。

しかし、あくまでも「結果」に対しての状況把握であり、「原因」に対する手がかりは現物から読み取れないかもしれません。

作業者のルール違反や装置の稼働状況など、不具合につながる背景要因を現実として捉えることで、原因究明を迅速に進めることができます。

2つのゲン

三現主義に、「原理」・「原則」の2つのゲンを加えて、5ゲン主義と呼びます。

それぞれの意味を見てみましょう。

④:原理

あらためて「原理」の定義を確認します。

事物・事象が依拠する根本法則。基本法則。

大辞泉

つまり、物理や数学などの自然科学の法則に基づく普遍的なもので、てこの原理やフックの法則、オームの法則など、身近な例も多いです。

仮に、目の前で起きている事象が、自然法則に則らない結果を示しているのであれば、それは前提条件に誤りがある可能性が高いです。

例えば、ばねの引っ張り力に対する伸びの関係を表すフックの法則を例に考えてみましょう。

荷重と伸びには比例関係がありますが、その関係性が成立していない場合、どちらかの要素が正しくない可能性があります。

伸び量を測定する計測器、計測方法に異常がある、あるいは荷重の印加方法や荷重の値そのものがおかしい、などの要因が考えられます。

このように、自然法則から逸脱が無いか確認して、事象が理屈に合ったものかどうか、常に理論的な裏付けを取るように心がけましょう。

⑤:原則

次に「原則」の定義を確認してみましょう。

多くの場合にあてはまる基本的な規則や法則。しばしば原理と区別せずに用いられるが、原理は主として存在や認識に、原則は主として人間の活動に関係する。

大辞林

つまり、人間が制定した規則や法則のことを意味します。

例えば、「○○の3原則」のように多くの場合にあてはまる法則を表すものや、「原則として左側通行とする」のように制定した規則を表すこともあります。

原則に関しても、目の前の事象が原則に当てはまるかどうか、常に裏付けを取ることが望ましいです。

というのも、多くの場合に当てはまる経験則から外れたり、自分たちで制定した規則から外れたりすることは、異常を示すことに他ならないからです。

どんな場合に有効なのか

5ゲン主義がモノづくりのどのような状況で効果を発揮するのか、3つの視点で説明します。

1.不具合が発生した場合
2.生産のトレンド変化を調査したい場合
3.現場作業者の品質意識を把握したい場合

1.不具合が発生した場合

一つ目はトラブル対応のケースです。

直ぐに現場に駆けつける、直ぐに現物を確認する、直ぐに現実を把握する、この3つの考え方を三直三現主義と呼びます。

応急処置の記事でも紹介した通り、不具合が発生した時の初動対応は大変重要で、素早い処置がその後の被害の拡大を防ぎます。

とにかく、正確な情報をいかに早く集められるか、これは不具合対応の鉄則ですので、不具合の報告を受けたら、まず現場に向かうことを意識しましょう。

2.生産のトレンド変化を調査したい場合

日々の生産状況の変化を把握したい時にも、5ゲン主義は重要です。

例えば、製品の出来栄えを日々の抜取試験でチェックしているとしましょう。

規格範囲を超える場合はアラームが出ますが、規格内であった場合、現場から積極的に情報が入ることは少ないかもしれません。

しかし、管理図のちょっとした変化や、現場作業者が感じた違和感など、そこに異常の兆候や原因究明のヒントが隠れている場合があります。

そのような変化を把握するには、受け身で情報を待っているのではなく、5ゲン主義の実践で主体的に動くことが不可欠です。

3.現場作業者の品質意識を把握したい場合

装置や製品の状態だけではなく、人の状況を把握する上でも、5ゲン主義が有効です。

スタッフ部門の場合、特に管理者においては、日常的に現場の作業者と情報を共有する機会は少ないと思います。

それぞれの作業者がどれほどの品質意識を持っているのか、それは現場に入って直接話をして、実際の作業を目の当たりにすることで、初めて感覚を共有できます。

製品や装置の状況だけに着目するのではなく、有能な人材があってこその製造現場なので、作業者の意識向上を忘れないように心がけましょう。

何か起きてからだと遅いから、日頃から実践しよう

なぜ重要なのか

次に、5ゲン主義を実践することで、どのようなメリットがあるのか説明します。

1.迅速かつ的確な判断ができる
2.周りからの理解を得られる
3.事象の本質を捉えられる

1.迅速かつ的確な判断ができる

モノづくりの情報源はすべて現場にあります。

会議室で古い不確かな情報だけ集めて議論しているのと、リアルタイムで正確な情報を持っている状態では、違いは一目瞭然のことです。

私がこれまでに見てきた優秀な生産技術者も、管理職であろうが若手であろうが、トラブルが起きると真っ先に現場に駆けつけて指揮を執っていました。

2.周りからの理解を得られる

特に、管理職の場合に多いのが、若手や現場部門から「どうせ現場のことを知らないくせに」と揶揄されることです。

実際、管理職になるとマネジメント業務の負荷が高く、現場から遠ざかるのは、ある程度仕方のないことです。

しかし、たとえ1週間に1時間でも良いので、現場に足を運ぶ時間を捻出してみてください。

部下から間接的に情報を聞くよりも、生の声が聴けて情報収集を効率的にできるかもしれません。

また、現場作業者からも、「あの人は現場のことを気にかけてくれている」と認識が浸透していくことでしょう。

結果として、管理職が下した決断に対し、関係部門や部下の合意を得やすくなり、調整の手間が減って、業務を円滑に進めることが期待できると思います。

3.事象の本質を捉えられる

原理原則を重要視する考え方は、つまり物事の本質を捉えることに繋がります。

不具合調査は、自分の手で同じ不具合を再現させることができれば、ほぼ完了したに等しいです。

それは、本質的な原理(メカニズム)を把握していないと、狙って不具合を再現できないからです。

そこまで到達できていれば、パラメータを変えた時の結果を予測することもできるので、再発防止策の実施に繋げられるということです。

論理的思考も身につくね

こてつ経験談

数か月にわたる原因調査

とある部品の不具合が社内で発見され、部品の仕入先に原因調査を要請したときの話です。

ほぼ毎週に近いほど進捗報告の打合せを重ね、仕入先の方も設計・製造・品質管理のすべての部門が参入して、総力を挙げて対応してもらっていました。

しかし、どうやら初めての不具合事象だったようで、原因の見当がさっぱりつかず、調査は数か月に及んで難航しました。

いよいよ、仕入先が調査に行き詰って何も検討が進まなくなり、ダメ元で自社内に保管していた不良品を自分たちでも観察してみることにしました。

誰が現物を見ていたのか

不具合が長期化して、私たちの方も後がなかったので、1つのモノを半日かけて隅々まで観察しました。

すると、不具合品の表面にごく僅かな傷の痕跡を発見し、そこを手がかりに原因を突き止めることに成功したのです。

後から聞いて分かったのですが、仕入先の検討メンバーは誰も現品の状態を直接確認せず、現場からの情報を元に動いていたようでした。

調査を効率的に進めるために、現場でデータを取る人と、考察して指揮を執る人の役割を分担したい気持ちは良く理解できます。

しかし、最初に前提条件の認識をしっかりと合わせないと、事実と異なることが分かった場合、調査のやり直しが生じて二度手間になります。

今回の事例のように、「現物」の確認を怠ったことで、調査が長期化することもあり得るので、失敗談として参考になればうれしいです。

まとめ

  • 三現主義
    ⇒「現場」・「現物」・「現実」を表し、現場でモノをよく見て現実を把握することを重要視した考え方
  • 5ゲン主義
    ⇒三現主義に、「原理」・「原則」の2つのゲンを加えた考え方
  • どんな場合に有効なのか
    ⇒①:不具合が発生した場合
     ②:生産のトレンド変化を調査したい場合
     ③:現場作業者の品質意識を把握したい場合
  • なぜ重要なのか
    ⇒①:迅速かつ的確な判断ができる
     ②:周りからの理解を得られる
     ③:事象の本質を捉えられる

あくまでも、会議室は議論して方針を検討する場所なので、事実を見るための場所ではありません。

若手や管理職に隔てなく、フットワークの軽さこそが、迅速かつ的確な判断を下す一番の秘訣と思いますので、ぜひ5ゲン主義を習慣化していってください。

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この記事を書いた人

【経歴】
関東在住、40代、製造業(品質部門)。
これまで、研究開発、設計、生産技術、仕入先の品質管理を手掛ける。

【保有知識・技術分野】
統計学、信頼性工学、品質工学。
半導体、基板、有機材料、金属、セラミックスの材料、製造、加工技術。
部品加工(機械加工、化学処理)、組立・実装技術、分析・物理解析技術。
QC検定1級保有。

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