QCD+PSMEとは?総合的な品質管理で会社のブランド力を高める

QC的な考え方

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品質の要素を表すキーワードに、QCDやPSMEといった表現があります。

どちらも、品質要素を英語で表記した頭文字ですが、正しく内容を理解できているでしょうか?

特に、PSMEは聞きなじみの少ないフレーズで、なかなか普段の実務の中でも触れる機会は少ないかもしれません。

結論を先に言うと、PSMEは広義の品質の要素で、QCDと合わせて会社のブランド力を高める上で不可欠です。

この記事では、QCD+PSMEの各要素の意味と、広義の品質管理の重要性を解説します。

これまで、製品の機能・性能のみに着目した品質管理を行ってきた場合は要注意です。

今後、組織全体のブランド力の強化を計画している方にとって、組織改革に向けて動き出すきっかけになればうれしいです。

QCDとは

QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字のことで、総合的な品質の3要素を表します。

狭い意味での品質は、Qualityにあたりますが、お客様の満足度という観点では、CostもDeliveryも品質の一つと言えます。

とらまる
とらまる

うまい、やすい、はやいのキャッチコピーもQCDだね

Quality(品質)

製品の機能・性能を表す要素のことで、最も基本的な品質の意味にあたります。

「品質第一」というのは、やはり何よりもQualityが一番重要です。

市場での不具合やクレームは、お客様を危険に晒す可能性があり、会社としても信用を大きく失いかねません。

自動車のリコール問題のように、人命に関わるような不具合は特に影響が大きく、不具合の「可能性」が見つかった段階で対処が必要です。

リコールが出ると部品交換や修理の対応が発生し、結果的にコストや納期にも影響が出てしまいます。

いきなり全ての要素を改善するのが難しい場合は、まずは、Qualityを保証することを最優先に考えましょう。

Cost(コスト)

製品の原価、すなわち価格を意味します。

たとえ、Qualityが最上級でも、Costも同じく最高額であれば、顧客の満足度は十分とは言えません。

そもそも、一般的な市場価格に対し、あまりにも高すぎる場合、製品の受注自体がまともに成立しない状況に陥ります。

その結果、売上が立たずに会社として経営状況が悪くなり、優秀な人材の流出にも繋がりかねません。

過剰品質という表現があります。

製品の品質の実力値が、要求レベルに対して過剰に高い状態であることを意味します。

最低限の安全余裕は持っておく必要がありますが、あまりに過度な品質の維持は、かえって弊害をもたらします。

特に、管理コストや納期に影響が出るので、顧客要求に対して「必要十分な品質であること」を意識することが大切です。

Delivery(納期)

製品をお客様に納めるまでの期間で、リードタイムとも表現されます。

自分が顧客側の立場で考えた場合、すなわち、仕入れ先から部品を購入する場合を想定してみてください。

約束した納期を平気で破る会社をどう思いますか?

納期に合わせて、自社の生産ラインや作業者の確保を準備したにも関わらず、着手が遅延すると、計画がすべて狂ってしまいます。

そのような会社には、もう注文を出さず、次から別の業者を探したくなりますよね。

納期も契約の一部です。

会社としての品位を問われないよう、納期遵守の意識を浸透させる教育を継続することが大切です。

納期意識は社風に表れるからね

PSMEとは

PSMEとは、Productivity(生産)、Safety(安全)、Morale(モラル)、Environment(環境)の頭文字で、QCDよりもさらに広義の品質の4要素を表します。

Productivity(生産性)

生産性とは、生産の効率を意味します。リソース(お金、人、時間)に対するアウトプット(生産量、または生み出した価値)の効率を表します。

簡単に言うと、どのくらい効率よく生産できたか、ということです。

生産現場にとって生産性は、常に数値目標として掲げられる重要な指標です。

例えば、とある製品を100個作る場合を想定してみましょう。

作業者1人が1時間で対応するのと、2人がかりで丸1日かかるのでは、効率が何倍も違うことが分かると思います。

生産性の指標

生産性の代表的な指標には以下のようなものがあります。

付加価値とは、新しく生み出された価値のことを意味します。

大まかにいうと、売上高から材料費や運送費などを差し引いた額のことで、他にも財務諸表の金額から算出する方法もあります。

①:労働生産性=付加価値額÷労働者の数または総労働時間
⇒人数または時間あたりの付加価値を表す

②:労働分配率=(人件費÷付加価値)×100
⇒付加価値のうち、人件費の占める割合を表す

:有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産×100
⇒設備の使用の効率性を表す

④:労働装備率=有形固定資産÷従業員数×100
⇒従業員一人あたりに割り当てられる固定資産の額

⑤:売上高付加価値率=付加価値÷売上高×100
⇒売上高に占める付加価値の割合を表す

⑥:総資本回転率=売上高÷総資本×100
⇒総資本に対する売上を創出する割合

Qualityを維持する活動には、お金、人、時間がかかります。

製品の品質を維持しながら生産性を高めるというのは、生産技術をはじめとする製造に関わる関係者すべての命題でもあります。

いろんな視点から生産性を数値化してみよう

Safety(安全)

安全第一という言葉の通り、安全が土台にあってこそ、モノづくりが成立します

仮に、QCDすべてが優れた製品があったとして、その生産現場で日々災害が起こっていたら、そんな製品を買いたいと思うでしょうか。

そもそも作業者目線で考えると、危険な要因に囲まれた環境で、まともなモノづくりができるはずありません。

自分の身の危険を感じるような状況では、品質や生産性など考慮している場合ではないからです。

そのため、QCDを改善する以前に、まずは従業員全員の安全を確保できる環境を準備しましょう。

作業者の教育や職場全体での危険予知など、日々の積み重ねが従業員の意識向上につながり、安全な作業環境の構築に結び付いていくのです。

また、製品のライフサイクルで、使用する人の安全保証も含めた考え方を製品安全と言い、こちらの視点での安全を確保することも重要です。

Morale(モラル)

働く人の心の健康に関する要素です。

そもそも、何のために働くのかを考えると、それぞれの従業員には家族と幸せな生活を送るためや自己実現などの目的があります。

こういった自己の尊厳を大切にし、心身ともに健康な状態を目指して取り組む活動を、労働安全衛生活動と言います。

Environment(環境)

最後に、地球環境に関する取り組みです。

生産活動の中で有害物質をいくらでも排出してよい訳ではなく、ひとつの企業として責任を持って、環境に配慮した活動を推進する必要があります。

例えば、温室効果ガスや有害化学物質など、規制物質や管理対象物質は数多くあります。

一朝一夕で環境保護が実現できる訳ではないので、長期的な環境保全計画を策定し、年度ごとに内容を見直していく必要があります。

また、企業全体としての取り組みの他に、紙資料の削減やゴミの分別など日々の活動も重要ですので、個人単位で目標を設定することも定着できるとよいでしょう。

なぜ広義の品質管理が重要か

ここまで、QCDとPSMEの要素を解説しましたが、なぜ広義の意味での品質管理が重要なのか、2つの視点でメリットを整理します。

①:お客様の満足度を高める

そもそも品質とは、お客様の満足度を高めることで、これには狭義の品質Qualityだけでは不十分と言えます。

QCD+PSMEすべての要素のバランスが取れてこそ、お客様や市場から認められるもので、総合品質としてニーズに応えていく必要があります。

②:社員のエンゲージメントを高める

エンゲージメントとは、従業員の仕事に対してのモチベーションを表しており、いわゆる愛社精神などと表現されることもあります。

心身ともに健康、かつ安全な環境で、お客様の満足度の高い製品を作る企業は、誰もが働くことに誇りを持てることと思います。

このような企業で働く従業員は、生き生きと自信を持って自分の役割に専念することができ、その結果としてさらに良いものが生まれる好循環となります。

以上のように、社外、社内どちらに向けても、QCD+PSMEの考え方は重要と言えます。

結局のところ、「会社としてのブランド力」に関わる要素であり、ブランド力を高めるには、ひとつに特化するのではなく、総合品質を高めることが求められるのです。

まとめ

  • QCD+PSME
    ⇒広義の品質を表す要素の頭文字で、会社のブランド力の向上に不可欠
  • QCD
    ⇒Quality(品質)
     Cost(コスト)
     Delivery(納期)
  • PSME
    ⇒Productivity(生産)
     Safety(安全)
     Morale(モラル)
     Environment(環境)
  • なぜ広義の品質管理が重要か
    ⇒①:お客様の満足度を高める
     ②:社員のエンゲージメントを高める

木を見て森を見ずという言葉がありますが、Qualityの品質しか見ていないと、企業も人も成長できません。

企業側の努力も必要ですが、一人ひとりが自社のブランド力を高める意識を持つことで、ボトムアップで風土を変えるキッカケになります。

身の回りの小さい組織単位からで良いので、QCD+PSMEの要素に分解して、改善アイテムを挙げてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

【経歴】
関東在住、40代、製造業(品質部門)。
これまで、研究開発、設計、生産技術、仕入先の品質管理を手掛ける。

【保有知識・技術分野】
統計学、信頼性工学、品質工学。
半導体、基板、有機材料、金属、セラミックスの材料、製造、加工技術。
部品加工(機械加工、化学処理)、組立・実装技術、分析・物理解析技術。
QC検定1級保有。

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品質・生産の基礎知識をテーマに、用語の解説、使い方(作り方)、メリット、考え方のポイントを分かりやすく解説しています。
某メーカ様の品質教育用の資料としてもご活用いただいております。
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